エコガラスを多用したサポートスペースは、HUBと並んでNOTIAの環境を支えるカナメ的存在です。
建物の北面と西面にL字型で配置されたこの空間は、大きな蓄熱体であるHUBをくるんで外部の暑さや寒さの影響から守るバッファの役割を与えられ、高い断熱性能を誇るエコガラスの採用が不可欠とされました。
サポートスペースの使命はほかにもあります。自然採光と自然換気の実現、そして“人の心を高揚させる気持ちのいい空間の創出”がそれで、ここでもエコガラスの活躍が期待されました。
今井さんいわく「光、風、そして視線が集まる場では、やはりガラスが活きてきますね」
直射日光が当たらない北面には、一面に張られたガラス窓を通じて穏やかな自然光が入ってきます。
2・3階の西寄りは天井高6.4mの吹抜がつくられ、背の高い研修用水槽も置かれた明るくて開放感のあるスペースに設えられました。
対照的に東寄り部分では、窓の外にフィンを並べて光を抑制しています。
ここは前面道路を隔てて向かいの集合住宅と正対することから、視線に配慮した環境調和がなされています。ファサードのフィンは建物のデザインのみならず、互いの目を適度に遮る実用品でもあるのです。
西面は2・3階壁面の開口として北を向く窓が配置されています。これは正面近隣と向かい合うことなく光と風を取り込むためのデザイン。
実技研修の場でも、HUBの実習室でも、2・3階は「集中力を持って研修を受ける場」として開口部が少ない“暗めのスペース”と性格づけられています。メリハリを持って学んでもらおうという意図が感じられる計画です。
ひとつ上がった4階は一転して光あふれる空間です。
『ヒカリスペース』と名付けられ、フローリングを外部デッキとつなげて空間を拡張し、風景とともに開放感を演出しています。ガラスの面目躍如といったその趣はまさに「人の感情を高め、会話を弾ませる気持ちのいい空間(今井さん)」そのもの。我慢させて知識を詰め込むのでなく、人を主役に据えた研修で技術力を高めてもらいたい…技術スタッフに対する会社の思いがにじむようでした。
パッシブな自然換気もサポートスペースの大切な役割です。
「中間期には空調を止め、近くを流れる川に沿って北北西から吹いてくる季節風を取り込みます」と髙橋さん。聞けばなるほど、北西方向に面する開口も多くつけられています。
西日を避けた2・3階西面の窓は北に向かって外に開き、吹抜には北西の風を迎える縦一直線の突き出し窓も切られました。センサーが感知する内外の気温や風速から「今は自然換気がいいよ」とのサインが出れば、講師や研修生自ら手動スイッチで開けるといいます。
中間期とはいえ、大都会の真ん中のビルで、窓が主役のサステナブルかつパッシブに自然空調している…本格的な環境の時代を迎え、遠くない未来にはこんな風景が日常になるかもしれません。
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自社の研修施設をレベルの高い省エネビルにすることで環境建築の運営・チューニング力を磨いていく。「自分たちで省エネビルを管理していれば、どこに行っても自信を持って対応できますよね」と室井さん。
環境ビルが当たり前となっていく中、建物管理のプロにとって、それは必要不可欠な能力となるでしょう。
複雑なシステムの理解・制御力やエネルギー関連の素養、次々生まれる新たな知見も求められる中で、それでも常に真ん中に“人間”をおく。その思いがNOTIAの心地よさの源ではないか。
いつかまた訪ねたくなるような建築を振り返り、そんなことを思いました。
3階空調実習室から吹抜越しに見る西寄りのサポートスペース。画面左、縦に連なるのが自然換気用の窓群で高さは約6.8mある。電気制御で開き、自然換気の優位性があるタイミングで季節風をつかまえ取り込むのが仕事だ。西日対策として熱線吸収ガラスとエコガラスが組み合わされている
トップライトが吹抜けに光を落とし、明るさを高めている
真向かいに建つマンション住戸との“見合い”対策が取られた3階北側。必要があればロールスクリーンを降ろすこともできる。画面左はコンクリート空間HUBで、内部は実習室。バッファであるとともに、サポートスペースが建物内外の環境が混ざり合うペリメータゾーンでもあることがわかる。
白色のアルミ材を採用したフィンにはパンチングを施し、柔らかな表情に仕上げた
サンルームを彷彿とさせるヒカリスペース。エコガラスの窓は上下に分かれた上の部分が外に開き、自然外気を取り入れる
建物西面はガルバリウム鋼板が張られ、独特の意匠が目を引く。西日を遮断しつつ北西方向から吹き込む季節風をキャッチし、エコガラスの窓から取り入れるという目的のもと決定したデザインだ
西面内側にある空調実習室。決して大きくない開口だが、採光不足は感じられない
地下スペースを明るくするのは大きな命題だった、と室井さん。さまざまな使い方が想定でき、人の心にクリエイティブな刺激を与える空間だ。L字型に並び、天井高7.8mの吹抜に光を落とすエコガラスの開口部は高さ約3m、横幅は21mを超える