窓の“閉じる”と“開く”を絶妙のタイミングでコントロールしてエコガラスと風を味方につける。そんな“技あり住宅”もあります。
さいたま市北部に位置するI邸は、高窓のある吹き抜けのリビングルームを中央に配した2階建。すべての窓にエコガラスを採用したほか、目隠しと採光を兼ねたガラスブロックの壁や、愛猫の爪とぎ対策としてガラスの腰板を張るなど、素材としてのガラスを意匠にも生かしたデザイン性の高い住まいです。
ロケーションはさいたま新都心からわずか数キロ、最寄りの駅まで歩いて数分という、典型的な都市部の住宅地。ここで聞いた「風通しがいいので日中は真夏でもエアコンを使いません」という言葉は、やはり驚きでした。
住まい手が多くの時間を過ごすのは、東西南北に大小のエコガラス窓がついた1階スペースです。北面には地窓のような低い位置に切られた窓もあり、ここから終日涼しい風が入っては南側のリビングやキッチンまで流れていく、とのこと。
一方、2階は寝室のみが居室で、ほかには吹き抜けとルーフバルコニー、クローゼットとトイレを配置しました。
1階とは対照的に、熱がたまりやすい2階の窓は夜まで開けず、ガッチリ閉めて徹底的に遮熱しているといいます。そして日が暮れて外気温が下がったところで、おもむろに開けるのです。
すると1階の窓から温度の低い外気が室内に流れこみ、吹き抜けを通って2階の窓から外に出る空気の流れが発生。暖められた空気が上に上がる性質を生かした『重力換気』です。
同時に夜の涼しい外気を室内に取り入れて建物を冷やす『ナイトパージ』の状態もつくられ、寝室の温度も下がります。まさに技あり、エコガラスの断熱力を十二分に理解しての換気・空調術といえるでしょう。
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エコガラス窓はその断熱・気密力によって外から入り込もうとする熱気を遮り、室内の快適さを保ちます。
その一方で、壁と異なり開け閉めができるのが窓本来の姿であり魅力でもあるはず。断熱しつつ上手に開けて新鮮な空気を迎え入れる、アフターコロナの時代にエコガラスの新たな使いこなしもまた、始まります。