Builder’s Voice 工務店・ガラス店の声

提案こそプロの喜び(前編)

大畑祐二(おおはた・ゆうじ)
1968年生まれ。2005年、父親が会長を務める住宅建材会社<エイベックトーヨー住器>より分社の形で(有)ワイズ・ワンを設立。<エイベックエコ>のブランド名で、エコガラスを核とするエンドユーザー向けのガラスと窓まわり専門店として活動する。
商品や工事に関する説明・提案では、その明朗闊達なキャラクターと率直な物言いとで詳細かつ熱いトークを展開し、高い顧客満足度を実現。インターネットをメインに展開する独自の営業戦略を、他業界から迎えた社内スタッフとの絶妙なコンビネーションが支えている。社名は「アルファベットの最後の文字から1へ=仕事を達成するたび、それを次の目標へとつなげていく」の意。2級建築施工管理技士、福祉住環境コーディネーター2級


お客さまのタイプに合わせ、常に100%の対応を

ざっくばらんな語り口での説明は、わかりやすいと好評。とにかく見てほしいと電話してくるお客さまには、訪問時にカタログをどっさり置いていく。「あとでそれを見て、僕が話したことへの理解を深めてまた電話で質問してくれる。こういうお客さまの情報源は、インターネットよりも紙ベースなんです」現場ならではの発見だろう
<エイベック エコ>の名を冠したHPは、エンドユーザーにとっても敷居が低いつくり。一般的な価格表も明記することで、初めて電話する人の不安感を払拭している。「電話するという時点で、お客さまにはかなりの勇気がいると思うんですよ」

――親会社から分社されて5年、お仕事の中でエコガラスの存在感はどの程度でしょう。

月の売上の4~5割がエンドユーザーのお客さま向けの仕事ですが、そのうち7割以上がエコガラス関連です。こちらからの提案もすべてエコガラスですね。

――HPを見て問い合わせをされるお客さまには、2タイプあるそうですが。

いただくご連絡のうち、半数は「とにかく見に来て」とお電話くださる方で、あとの半数は窓についてインターネットなどで徹底的に調べた結果、うちを見つけてくださった方です。

――対応の仕方もそれに合わせて。

はい。「見に来て」とおっしゃるお客さまには、資料やカタログを持ってすぐにうかがいます。
最初から「内窓をつけたいんだけど」といった話をされる方が多いですが、そこで「ちょっと待ってください、お悩みは何ですか? 結露ですか寒さですか」と尋ねて、あとはお客さまの気が済むまでひたすら話を聞く。話したくてたまらないと感じている方が多いんです。 ひと通り話し終わられたところで提案をすると、それですぐ決まることもあります。

反対にご自身で調べているお客さまとは、メールである程度やり取りしてからお宅にうかがうことが多いです。
そのときはこちらが怒濤のようにしゃべって説明する(笑)勉強されているお客さまに「負けたくない」と思っちゃうのかもしれませんね。

――見積にもポリシーをお持ちです。

いろいろなパターンで比較したい方が増えているので、1回につき2通りは出しています。最近は工事費込みで窓1枚ずつ見積ることもあります。

――手間がかかりますよね。しかもHPには「何度でも無料で」と明記しておられますし。

大変ですが、常に100%の対応をしたいと思っているんです。
工事費の考え方はうち独自の決めごとがありますし、なによりも「工事費一式」ってお客さまにはさっぱりわからないじゃないですか。
それに、ここまでやると最終的に価格交渉せずに依頼してくださることが多いですよ。お客さまとの商談は、8割以上の確率で成立しています。


<素人目線>を保ち続けて強みに

電話応対とHP制作を担当する坂本麻里子さんは、ワイズ・ワン立ち上げ時から会社を支えてきた。業界の常識にとらわれない<普通の人>の感覚を持ち続け、顧客ニーズを的確に把握し応える。大畑さんの懐刀的存在だ
施工を担当する木下泰吉さんは、もともとは自動車整備士として技術の腕を磨いてきた。工事後のお客さまアンケートでは仕上がり・マナーとも常に最高評価を受けるが「自分としては普通にやっているのでわかりません」。寡黙さの中に秘められた仕事へのプライド
無駄なものが見当たらない整然とした工場も<工事の質>を支える要素

――エンドユーザー向けの業務をもっと伸ばしていかれるのですか。

これからはそっちでいきたいですね。
会社を立ち上げた当初の2年は、エンドユーザーのお客さまをメインにしたいと思いつつも、何をどうしたらいいのかわかりませんでした。
今までやってきた建設屋さんとの仕事と同じように、エンドユーザーさんに対しても安い商品から見積もり、何の提案もなかった。

そんなときに、エコガラスに出会ったんです。
正直「高くてそんなもの売れないでしょ」と思いました。でも問屋さんに勧められてHPにメインで掲載したら、ヒットしちゃって。

社内のHP担当者からは「問い合わせてくる方は<安いもの>ではなく<より効果の高いもの>を、それに見合ったお金で求めているみたいです」と言われましたが、最初はすごく違和感がありました。
安いものを出さなければ反応はない、次の提案もできないと思い込んでいた。それを取っ払うのに、1年かかりました。

――エンドユーザーのお客さまが持っている感覚に初めてふれた、という感じですね。

HPの担当者は、会社立ち上げ時にこの業界に足を踏み入れた<素人>で、お客さまと同じ立場でものを考えることができる人間でした。<欲しいのはよい商品。プロの目で本当にいいものを勧めてくれればいいのに>という思いがお客さまの中にあることを教えてもらった。

こういう視点が身近にあって、よかったと思います。おかげで僕の提案力もだんだんアップしていきました。

――施工の現場でもいい意味で<素人目線>を保ち、お客さまからは好評と聞きます。

施工担当者も、もとは別の業界から来た技術者です。だから、汚い格好をしてスピード重視でバタバタやる、いわゆる新築現場での仕事の仕方を知らないんですね。そこがいい。

20年も建設現場でやってきた僕から見れば<時間かかりすぎだよ>と思うことも、お客さまにとってそれは丁寧できれいな仕事。仕上げも掃除も、僕にはできないやり方です。
お客さまの家には必ず新しい靴下を履いて上がり、仕事が終わったら脱いで次のお宅へ。そこでまた別の新しいものを履いて仕事にかかる、そんなこともやっています。

――お客さまにとってはうれしい気遣いですね。

すごく大事なことだと思っています。それも工事の質のひとつですから。


インターネットの外側にいるお客さまに伝えたい

HPでは、トップに<結露・断熱><暑さ><防犯>など困りごと別のQ&Aを配置し、悩みのメカニズムから対処の方法、おすすめの商品までトータルに説明
社内のチームワークは抜群。他業種での経験が多くの場面でよい作用をもたらしている

――集客の80%がHPから。サイトも充実していてわかりやすいですね。

工事後のアンケートや直接聞くお話などから、多くのお客さまが価格以上に<プロから見て本当に効果のあるもの>を求めていると感じてきました。
そういった方々に向けてきちんと提案するための一助に、という思いでHPをつくっています。

でも、悩みもありますよ。

うちに来てくださる一般のお客さまはインターネット世代で、年齢層としては30代から上は50代くらい。この方々で半分以上です。

ところが、実際に工事を請けているお客さまで意外に多いのが、ご主人が定年退職され、お子さんが独立しご夫婦ふたり、お金もそこそこあって家をつぶすつもりもなく、快適に過ごしたいからリフォーム希望…というお客さまなんです。
大きなターゲットとなる層ですが、そこに対して僕たちの仕事を伝える術がないんですね。

――インターネットをあまり使っていない層へのアピールをどうするか、ということ。

チラシを撒いたこともありますが、2万3万撒いても、ある程度以上は無理です。
やはり大きいのは、新聞広告やテレビで知らせること。新聞を見てご連絡をくださるお客さまは圧倒的に60代以上で、うかがってすぐに工事が決まることも多いです。まちがいなく需要はあるんですね。
エコガラスという名前を知っている方が結構いるのも、以前流れていた成海璃子さんのCMの効果です。

今、公募が行われている補助金制度※も<ガラス取替の断熱リフォームの費用が三分の一戻ってくる>とCMを打てば、すごいことになりますよ。
家電エコポイントや自動車減税があれだけのCMを打ったのに比べて、もったいないです。このあたりはメーカーさんにも力を入れていただきたいですね。


取材日:2013年9月29日
聞き手:二階幸恵
撮影:渡辺洋司(わたなべスタジオ)

※平成25年度 既築住宅における高性能建材導入促進事業

大畑祐二さん(後編) プロにしかできない提案をしたい 12月1日掲載予定
株式会社参創ハウテック
有限会社ワイズ・ワン
神奈川県横浜市
社員数 4名
事業内容/各種ガラス工事/結露・断熱対策工事/アルミサッシ・エクステリア工事/窓まわりに関する各種商品の提案・販売・施工

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